タイの国旗にも表現されている仏教。 タイでは葬儀の時は勿論だが,日本では「神事」である会社の創立記念日などの節目の式典や,家を建てる前の地鎮祭などでも,
寺の僧侶がやってきてお経を唱える。
テレビや新聞では高僧の説話が挙って取り上げられ,人々は地元や各地の寺に詣る。 一般的にタイでは,高僧は国王に匹敵するほどに尊敬されている。
本家のページの「穴場的三寺院」のとおり,タイ語で「ワット」とはお寺のこと。 カンボディアのアンコールワット(タイ語では「ナコン・ワット」と言う)も,
確かに寺である。
タイの人に尋ねたことがある,国王と高僧はどちらが偉いのか? あるタイの人は「政治の世界では国王が偉いのだろうけど,教えの世界では高僧が偉い」と答えてくれた。
上述のとおりタイでは信仰の自由が認められているが,実際は仏教が最も「強い」。 従って,建前はどの宗教も平等な扱いを受けているハズなのだが,仏教が優遇されている印象は免れない。 タイの暦で,
マカブーチャ(万仏祭:2月)やカオパンサー(入安居:7月または8月)などの仏教行事が祝日になっていることからも,それが見え隠れしている。
しかし,タイの現実は厳しい。 イスラム教徒が多いマレーシア国境の南部3県(ナラティワート,ヤラー,パッタニー)では,毎日のように軍や警察施設が襲撃されたり,
時には寺の僧侶や学校の教諭が襲われたりしている。 この背景には,タイ政府のこの地域に対する措置の不公平感から生じる不満や,仏教勢力が強いタイからの独立要求が根強いと言われている。
同じ信仰の自由が認められている我々日本人にはピンと来ないが,これまでの歴史が物語っていることからも,宗教間の対立とは我々の想像を超える根深さがあるのだろう。 〔2006年1月記〕