Cambodia Report 3.10

ニャック・ポアン

ニャック・ポアンの聖池と中央祠堂
聖池の北東の角から望む 聖池の水はほぼ干上がっていた

 そろそろ陽も傾いてきました。 今日最後の遺跡は,プリア・カンの東 3km ほどに位置するニャック・ポアンです。 ここは12世紀末にジャヤヴァルマン7世が施療院(=今でいう病院)として建てた仏教寺院で, 観世音菩薩(アヴァローキテーシュナラ)に捧げられたものと言われています。

 敷地には一辺70mの正方形の聖池「ジャヤタターカ」があり,その中央のあたかも宇宙に浮いているような島に円形の中央祠堂が建てられています。  中央の聖池は,病を癒す不思議な聖水を湛えたといわれるヒマラヤの聖湖「アナヴァタプタ」(現在の西チベットの聖山,カイラス山の南に位置するマナサロワール湖を指すものと推測される)を象徴するものとのこと。  中央聖池の水は,人間(東),獅子(南),牛(西),象(北)の頭部の彫刻を通って27m四方の正方形の池に流れ出る構造になっています。 これら4つの彫刻は,聖湖から流れ出るインドの四大河(諸説あるが, 現在のインダス川,ガンジス川,パキスタン領内を流れるサトレジ川,アッサムからバングラデシュに流れるプラマプトラ川などが有力)を象徴したものといわれています。


東小祠堂の人面

この人面は,13世紀の中国の周達観の見聞録では「金の仏」と記されているとのこと。 この口を通じて,水が中央聖地から東側の池に流れていた模様。


南小祠堂の獅子の頭部

獅子はタイの「シンハビール」でもお馴染み。 「世界標準」同様,この地域でも守り神とされている。


西小祠堂の牛の頭部

この動物は不詳あるいは馬という説もあるが,1295〜1297年に元(今の中国)からの使節に随行したカンボディアに滞在した周達観は,彼の見聞記『真臘風土記』に,牛と残している。  クメール神殿の「常識」では,牛は南を向いてヤマ神を乗せていることが多いが,ここでは西向きになっている。


北小祠堂の象の頭部

象はタイをはじめ,ラオスやこのカンボディアなど,東南アジア〜南アジア各地で神聖な動物とされている。


中央聖池東側の神馬ヴァハーラ

航海の途中で嵐に遭い羅刹女島に漂着したシンハラ一行を,神馬ヴァハーラが救出している姿。 シンハラは常日頃, 観世音菩薩を崇めていた善良な商人であり,神馬ヴァハーラは観音菩薩の化身といわれている。 神馬の足の間に人の顔が見える(下の写真)ところが, 何とも神秘的というか,不気味というか…。 



中央祠堂を東から望む
 この遺跡の名前,ニャック・ポアンとは「絡み合う2匹のナーガ(蛇)」という意味です。 この2匹のナーガは中央聖地真ん中の祠堂の階段の下の周りを, 頭を東に向け,互いの尻尾を西で絡ませて取り巻いています。 右の写真で,神馬ヴァハーラの左右に見えるのがナーガの頭です。

 人々はこの聖池の水を薬効がある聖水と信じて尊び,病を治すべくこの寺院に集まってきたとのこと。

 アンコールワットの日の出に始まった 2003年の長〜い初日が,やっとのことで終わりました。 いや〜疲れた元日だったなぁ…,宿に戻って疲れを癒しましょう。  さて,明日はどこに行くのでしょうか?


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