Antenna for Digital TV - Part3

地上デジタルTVアンテナ
製作&設置奮戦リポート

〜その3〜
2011年5月 おもしろタイリポート編集部・テレビ受信グループ
 テレビの電波が強いので、当初の6エレメントから4エレメントにグレードダウンして地デジのアンテナを作り上げました。 さて、これから屋根裏に設置するのですが、うまく行きますかな?

【屋根裏に設置〜しかし・・・】
 でき上がった4エレメントのアンテナを屋根裏に持って上がります。 BSのパラボラアンテナの接続を外し、屋内に配線されているケーブルを使って、まずはテレビに地デジのアンテナだけを繋いでみたところ、 予想どおり問題なく地デジのテレビが映りました。 NHK教育だけが少し受信レベルが弱いのですが、見る頻度が低い(=文化的ではない?笑)ので、ヨシとしましょう。

自作の地デジ用4エレメント・アンテナ接続後のアンテナ結線図

 さぁ、これで地デジもBSも支障なく見ることができるぞ!と、手元の分配器(本来はアンテナで受信した電波を2つ以上のテレビに分ける機能のもの)を逆に使い、作ったばかりの地デジのアンテナとBSパラボラアンテナを、上の図のように繋いでみました。  地デジは一通りOK。 BSに変えて一通り見て、こちらもOK。 そして地デジに戻したら・・・あれ?NHK教育が異常に弱い。 頻繁に画面にシマシマが出て、音声が途切れます。 どうしてだろう・・・?

【テレビのBS電源ON/OFFの時の受信レベル】
リモコン
チャンネル
放送局名周波数
[MHz]
受信レベル [dB]
BS電源
OFF
BS電源
ON(差)
KBC5818778 (▲ 9)
NHK教育5275740 (▲17)
NHK総合5639181 (▲10)
RKB5758576 (▲ 9)
FBS5878973 (▲16)
TVQ5519792 (▲ 5)
TNC5998370 (▲13)
 BSを見ることができるテレビでは、BSアンテナ向けの電源を供給できる機能を備えているものがあります。 一般のBSアンテナには、BSの衛星から受信した高い周波数(11727〜12149MHz付近)の信号を、 地デジのテレビが受信できる電波の周波数(1049〜1471MHz付近)の信号に換える装置が付いています。 この装置を動作させるために必要な電源を、テレビからアンテナのケーブル線を介して供給するものです。

 BSのチャンネルを見る時には、テレビからBSアンテナ向けの電源を「ON」にする必要がありますが、一般的にはテレビが付いている間は、BSアンテナ向きの電源は常時「ON」になっています。  どうも、このBSアンテナ向け電源の ON-OFF と、地デジの受信レベルに関係がありそうなので、調べてみました。 その結果は上の表のとおりで、BSアンテナ向きの電源が ON の時に、全般的に地デジの受信レベルが下がることが判りました。

 原因らしきものは判ったのですが、さ〜て、これからどうしよう? 繋げば終わりと思っていたのですが、日頃の行いが悪いからか(笑)、なかなか思うようには旨く行かないモノですねぇ。


【対策は・・・?】
 すぐには対策が思い浮かばなかったので、暫くはアンテナをテレビと同じ部屋の壁に立て掛けて地デジを見ていました。 部屋の中に置いたアンテナだと、編集部員が部屋の中を動くとチャンネルによっては映りが悪くなることがあります。  まぁ、一般的にはそうですよねぇ。 早く屋根裏に上げたいのですがねぇ。

 いろんな評論家さんに聞いてみたところ、ひとつのヒントを得ることができました。 前述のBSの衛星から受信した電波の周波数を、薄型テレビのBSチャンネルが受信できる電波の周波数の信号に換える装置が、地デジのチャンネルに悪さをしているのではないか?というものです。  う〜ん、言われてみればそうかもしれない。 ある周波数(チャンネル)で強い電波が出ていると、その周辺の電波が全般的に弱くなる現象(「感度抑圧」といいます)があります。 今回の現象はこれによく似ているのです。

 『BSのパラボラアンテナから地デジのテレビ付近の周波数で妨害電波が出ているもの』と勝手に仮定して、この妨害電波を弱くしてみることにしました。 サイトで調べてみると、ある範囲の周波数の信号を弱くするバンド・エリミネーション・フィルター(Band Elimination Filter:BEF)の解説が こちら (*2) にあり、 その設計・製作方法を こちら (*2) に見つけました。 コイル(インダクタ)とコンデンサ(キャパシタ)を組み合わせて作るものです。  このフィルターを、BSのパラボラアンテナの出口に入れてやれば、妨害電波が弱くなるはずです。
フィルター接続のイメージ

 アンテナを設計した時と同様に、編集部で受信する地デジの各チャンネルの中央部あたり

  *fo = (527+599)/2 = 563MHz

560MHz付近の電波を弱めるBEFフィルター
の信号を中心に弱める BEF を作成することにしました。 このフィルター (BEF) の作成に当たって、まずコイル(インダクタ)を作ります。 本来なら、ちゃんと設計・製作した上で、コイルの性能を示す数値である「インダクタンス」を正確に測定すべきなのですが、一般的には、身の回りに測定装置がありません。 これだけのために数万円以上もする測定装置を買うのもバカらしいですからね。

 繰り返しになりますが、BEF はコイルとコンデンサを組み合わせて作ります。 コイルの性能が少々いい加減でもコンデンサでカバーできるので、まずは、適当にコイルを作ってみることにしました。 ここのページ (*2) によると、直径3mm弱で1回巻のコイルを銅線で作れば 10〜15nH のコイルができます。 実際、この程度の小さな容量のコイルは、 正確に製作することができませんので、15nH のコイルができたとして設計すると、560MHz の電波を弱めるためには、コンデンサの性能を表す数値である「キャパシタンス」が 5.4pF 位になります。

 このコンデンサも、「キャパシタンス」を変化させることができる部品(トリマコンデンサ)があります。 少し下の方の周波数の信号も弱くするために、7pF と 15nH のフィルター回路(弱くなる中心周波数=約490MHz)も直列に接続し、上のような回路で作ってみて、後は調整することにしました。


【BEF フィルターの作成】
 BSパラボラアンテナから出ているであろう地デジの妨害電波を弱めるフィルターの設計ができたので、部品を買いに行きました。

フィルターの部品
 最近は、この手の部品を扱っている店がなかなかないんですよね。 幸いに福岡にはカホパーツセンターという店が、昔からこの手の部品を販売しています。 入手が難しいようであれば、送料はかかりますが、ネットで探す方が早道でしょう。
  
【フィルターの部品一覧】
部 品仕 様価格(税込)
両面基板ガラスエポキシ\141
セラミック
コンデンサ
7pF 50V\80/5個
トリマ・コンデンサ12.5pF\100
コイル用銅線#22, 長さ8m\160
ケース\100ショップの
小型タッパー
\105/3個

 屋根裏のアンテナの近くに設置するので、ホコリ対策としてケースを準備しました。 これは \100ショップの小型(3つで\100)のタッパーウェアを使うことにしました。  基板やコンデンサ、コイル用の銅線は部品屋で入手しました。 全部で \600弱、後は回路図どおりに作り上げればイイはず、とまずは精密ドライバに銅線を巻き付けて直径 2mm のコイル(15nH 相当)を作ります。  コンデンサとトリマコンデンサを基板の上に並べ、久し振りに半田ゴテを握って、フィルターを作ってみました。

(左)基板上に組み上がったフィルターを (右)タッパーのケースに入れて出来あがり

 手先が不器用なのと最近殆どこの手の工作をやってないので、不格好ではありますが、何とかフィルターらしきものができあがりました。