Antenna for Digital TV - Appendix

地上デジタルTVアンテナ
製作&設置奮戦リポート

〜番外編〜
2011年5月 おもしろタイリポート編集部・テレビ受信グループ
 これまでのページを読まれて「地デジのアンテナを作ってみようかな・・・」と、良からぬ誘惑を受けた方向けに、これまでの記載と重複するかもしれませんが、比較的電波が強いところで地デジのアンテナを作る場合の一般的な設計方法(例)について書き留めてみました。

【事前調査】
 まずは、見ている地デジのテレビの電波がどんな周波数[MHz]、あるいはどんな波長[cm]かを調べて下さい。  地デジの周波数は、それぞれの放送局が地デジの何(13〜62の数字)チャンネルで送信されているかが判れば求めることができます。 各放送局の送信チャンネルはネットで調べればわかりますが、エリアによっては中継局の電波を受信しているところもあります。 ここで注意しなければならないのは、リモコンの番号と、実際に地デジの電波が出ているチャンネルは、一致しないことです。  また同一都道府県内であっても、どこの送信所の地デジの電波を受信しているかによって、リモコンの番号が同じでも実際の地デジのチャンネルが違うことがあるので、ご注意下さい。

 ネットで地デジのチャンネルが判れば、そのチャンネルで送信されているテレビの周波数は、概ね

   *周波数 f [MHz] = (6×地デジのチャンネル)+395

となります。 本当は各チャンネル毎に、小数点以下が何桁か付くのですが、実際にアンテナを作る上では殆ど影響ないので無視します。

 次に、テレビが実際に放送されている周波数から、アンテナの長さに関係する波長[cm]を算出します。 波長を求めるには、次のように計算します。

   *波 長λ[cm] = 30000÷周波数[MHz]

 皆さんのところで受信できる各放送局の送信チャンネルを調べて、それぞれの放送局の電波の周波数[MHz] と波長 [cm] を調べて下さい。 一覧表にすると判りやすいでしょう。


【アンテナの設計】
 製作するアンテナは、受信できる地デジのテレビ局の電波を全般的に受信ことになるので、事前調査で調べたチャンネルのうち、一番低いチャンネルの波長[cm] と一番高いチャンネルの波長[cm] の平均値を求めます。  こうして求めた波長が 設計波長:λo[cm] になり、アンテナ設計に当たって基本となる数字になります。

 アンテナの設計方法は、その目的によっていろいろありますが、ここでは

 (1)手軽に製作できること
 (2)比較的広い周波数帯の信号を受信できること

を目的に、今回製作したアンテナと同じ設計で、比較的広い周波数の電波の受信性能が高い6エレメントOWA(Optimized Wideband Array)アンテナを設計してみます。 寸法は下の図のとおりで、「λ」に今求めた設計波長:λoの数値[cm] を入れて計算すれば、アンテナの寸法を求めることができます。   

6エレメントOWAアンテナの設計例

 上の図を少し説明しましょう。 この図では左がアンテナの「前」、すなわち左の方を電波が来る方角に向けることになります。 後(右)から2番目の「J」の形のサカナの骨には Rad と書いています。 これは Radiator:放射エレメントで、テレビに繋がる同軸ケーブルが直接繋がっています。 このサカナの骨のアンテナは、 受信した電波が効率よくこの「J」の形をした Rad に集まるようになっているのです。

 アンテナ設計にあたっては、この「J」の間隔も厳密に計算して求めるべきところですが、前述の設計波長:λo[cm]が数cm違ったところで、数mm 程度しか変わらないので、「J」の間隔は一律 1.0cm にしました。 ここは厳密に作らなくても、アンテナの性能が飛躍的に低下することはありません。

 一番後(右)側にある一番長いサカナの骨は「Ref」と書いていますが、これは Reflector:反射エレメントで、前から来る電波をすぐ前の Rad に反射させる役割のものです。

 Rad より前(左)側にある Dir-1〜Dir-4 は、Director:導波エレメントで、前から来る電波を Rad に効率よく伝える役割のものです。 上の図では、この Dir は4本ですが、アンテナの性能をアップさせたい場合は、Dir-4 と同じ長さ(0.41λ)のエレメントを、Dir-3〜Dir-4 と同じ間隔(0.24λ)で、Dir-4 よりも前(左)の方に並べるといいでしょう。  その場合、アンテナ全体の長さが長くなるので、骨を支える「脊椎」の役割(「ブーム」と呼びます)の材料を長くする必要があります。


【アンテナの材料】
 製作するアンテナの材料は、上の図の Dir-1〜Dir-4、Rad、Ref は電気が通る金属であることが必須です。 各エレメントを固定する脊椎(ブーム)は、金属でも非金属でも構いません。 注意すべきことは、同軸ケーブルが「J」に繋ぐところで直接ショートしないことです。 「J」の半分の「U」の部分に電波が集まるので「U」を通ってショートしているのは構いません。 作りやすさを考えれば、このサイトでご紹介したとおり、ブームには木材がいいかもしれません。  しかし、屋外に設置するのであれば、耐久性(耐風、耐雨、耐紫外線)を考慮する必要があるので、「J」に繋ぐ同軸ケーブルも、つなぎ目にビニルテープを巻くことや、熱収縮チューブで覆うこと、コーキングで保護することなどが必要になるでしょう。


 以上、おもしろタイリポート編集部・テレビ受信グループの不粋を結集(笑)して、一般的な地デジアンテナの設計方法について書いてみました。 某かのお役に立てば幸いです。(2011年5月記)